ソメイヨシノはどうして花を先に咲かせるのか

昔から気になっていることの一つに、春になるとなぜソメイヨシノは花を先に咲かせて、後から葉を出すのかという疑問がありました。

ソメイヨシノだけに限らず、モモ、リンゴ、スモモなども同様に先に花を咲かせてから葉を出します。

ところがヤマザクラは花と葉が同時に出てきます。

花を咲かせるエネルギーは、前年度に蓄えた栄養を基にしているはずで、栄養の蓄えが十分なら、たくさんの花を咲かせることができるし、そうでなければ少ない花しか咲かせられないはずです。

なぜそんな危険な植物生理になっているのか、とても不思議です。

一般的な植物をみると、栽培植物のダイコン、キャベツ、オクラだって種を植えて、先に花を咲かせるものは見当たりません。

イネだって麦だってそうです。

野草のカラスノエンドウ、オナモミ、タンポポだって体を作り上げてから花を咲かせます。

ほとんどの植物は、先に葉を出し植物の体を作り上げてから、子孫を残すために、葉を変形させた花である生殖器官を使って子孫を残す活動を行います。

個体維持の後に、種族維持が来るわけです。

ただ植物の中には、ヒガンバナやイヌサフランのように、ある季節になると、花が咲きだす変わりものがあります。

ヒガンバナの場合には、秋口に花が咲くとそのまま枯れてしまいます。

花が終わってから葉が出て茂ります。

冬の厳しい寒さの中でも葉が青々と茂っています。

春が過ぎる頃、葉は枯れてしまいます。

ヒガンバナは夏季休眠する植物です。

その間に球根に栄養を蓄えます。

ヒガンバナは三倍体なので種ができません。

ヒガンバナは、球根に栄養を蓄える作業と、子孫を残す(種ができませんが)作業をきちんと分けている植物と言えましょう。

イヌサフランは球根で増えますが、花が咲いてから葉が出てくるので、ソメイヨシノと同じ植物生理のタイプですね。

ソメイヨシノとヤマザクラでは、どちらが生きていく際に合理的なのでしょう。

ヤマザクラの方が危険を回避する戦略としては、合理的に感じてしまいます。

一般的な植物のように体を作ってから子孫を作る戦略とは違うのですが、花を咲かせて子孫を残す作業と、葉で光合成しながら栄養を確保することを同時に行う戦略をとっているわけです。

ソメイヨシノの生き方は、花を咲かせるためにエネルギーを全て消費する可能性がある危うい生存戦略のように思えてなりません。

ヤマザクラとソメイヨシノのどちらが環境に適応的で進化的なのか、不思議だなあといつも考えてしまいます。

カモ撮りこうちゃん