農家はマメコバチのヨシ束を買ってサクランボを受粉させる

天童周辺では4月末になると果樹の花が咲き出します。

この花の時期に出会うと山形が果樹王国と言われるだけのことがあると納得できます。

サクランボの次にスモモ、ラフランス(洋ナシ)、モモやリンゴ等の花が少しずつ時間をずらして咲いていきます。

この大量の果樹の花を受粉させるのは大変です。

バラ科のサクランボやリンゴは自家不和合性なので自家受粉で種ができないので、長い旗竿の先の鳥の羽のような房(ラブタッチという)で異なる種(しゅ)の花粉で人工授粉を行っています。

メシベに異種の花粉がつくので異なる種(たね)が出来ることになり、サクランボがそれぞれ違った実つけるから味が違うように思えますが、子房の中果皮の部分を食べているので同じ味なのです。

人工受粉の作業はとても大変ですが、その作業をミツバチ等のハチに任せることが一般的です。

何年か前にはオーストラリアから輸入している西洋ミツバチがウイルス等で大量死して必要な受粉作業ができなかったと聞きました。

受粉するハチたちに西洋ミツバチ、日本ミツバチ、ジバチ、マメコバチがあり、他にもハエの仲間もいますが、一斉に咲くサクランボやリンゴの花の受粉には、こうしたハチたちがどうしても必要です。

茅葺屋根の軒先にヨシの茎の束がぶら下げてあるのを見かけます。

これはもともといるジバチのための巣です。

秋にジバチの成虫がそこの中に卵を産み、春になって蛹が羽化して成虫になりサクランボなどの果樹の受粉をしていたのです。

ところが周辺一帯の果樹の花が一斉に咲くと、自然のジバチの数では間に合わなくなり、西洋ミツバチを買って受粉させていたのです。

上述のような西洋ミツバチが輸入できなくなって、小さなマメコバチを使うようになってきたようです。

山形では秋になるとホームセンターでマメコバチの卵(繭)が入った一定の長さに切ったヨシの茎の束が売られています。

値段は一束3000円程です。

NHKの「ニッポンの里山」で、宮城県石巻河口のヨシ原のヨシは、昔は茅葺屋根の葺く材料として使っていたが、今ではヨシズやマメコバチの巣として使われていると話していました。

サクランボ畑を歩くと畑の真ん中に、小さな屋根付きの小屋にたくさんのヨシの束が置かれています。

春になるとマメコバチが羽化して近くのサクランボの受粉を助けるのです。

ただマメコバチが買った農家の畑だけを受粉しているかどうかは不明ですが、それほどに一面サクランボなどの果樹が咲きます。

受粉が終わって実をつける頃を過ぎると、小さな小屋のヨシ束はバラバラになって畑に散乱しています。

また翌年もマメコバチの卵(蛹)が入ったヨシ束を買わなければならないのでしょう。

色々な商売があるものだと感心してしまいました。

(ハチ目 ハキリバチ科 ツツハナバチ属)

カモ撮りこうちゃん