成虫のまま冬を越すオツネントンボ

チョウの中には成虫のまま冬を越すチョウがいます。

蟹江周辺ではキタキチョウ、キタテハ、ムラサキシジミなどです。

トンボにも成虫で冬を越すトンボがいます。

名前もずばりオツネントンボです。

冬を成虫で越すトンボがいるのは知っていましたが、見たことはありませんでした。

天童に住んでいて野山を歩き回っていた時に、偶然数回見る機会がありました。

5月半ばに紅花で有名な山形市高瀬の紅花トンネルに向かう手前のハス田で、イトトンボの写真を撮ろうとしていた時に、交尾態になった茶色のイトトンボを見かけました。

ブルーやグリーンの綺麗な色彩のオオイトトンボなどが多い中、茶色のイトトンボはとても変わっています。

羽化したばかりのイトトンボかなと思ったのですが、交尾態になっているので成虫だと思われました。

ハス田の脇のガマの葉に止まっていました。

私が近づくと交尾態のそのイトトンボは、飛んで別のガマの茎に止まりました。

それが初めて見たオツネントンボでした。

オツネントンボは羽を開いて止まるアオイトトンボ科の仲間ですが、羽を開いては止まりません。

成虫で1年中見かけます。

「日本のトンボ」(尾園暁 川島逸郎 二橋亮 文一総合出版)には、幼虫が見られるのは4月から9月頃までで、幼虫期間は1か月半~3か月程となっています。

冬を成虫で越すと記されていますが、チョウのように枯れ葉の裏で越すのでしょうか。

山形は雪が深く、厳しい寒さに閉じ込められながら何か月も成虫のまま過ごせるとは思えないのです。

人家の納屋や屋根の庇(ひさし)裏などで冬越しするのではないかと予想しています。

5月に交尾態を見かけたので、冬を無事越して種の存続に勤しんでいるのでしょうか。

なかなか信じられない感じがしてなりません。

他の季節では8月31日と10月23日にも高瀬周辺の林縁で見かけました。

やはり一年中成虫が見られるようです。

この様子から、この周辺で子孫を繋ぐ循環が行われている可能性があります。

オツネントンボは夏から秋にかけては林縁で生活し冬越し、春先には水辺で産卵・孵化する習性があるようです。

林縁に近いハス田は、オツネントンボが子孫を繋ぐ循環を可能にしている大きな条件になっているのではないかと考えています。

でもやっぱりこんなトンボがいることに、とても驚いてしまいました。

(アオイトトンボ科 オツネントンボ属)

カモ撮りこうちゃん