カタクリの生息場所の拡大のしかたに、少し納得できたかも

早春の東北の山に入るとカタクリが咲いています。

カタクリは群生していることもあり、1株だけで咲いていることもあります。

植物が生存場所を拡大する戦略には2つ考えられます。

1つは種を近くにばら撒きながら少しずつ生存場所を拡大していく方法です。

ホウセンカやゲンノショウコ(フウロ科)などがそれに当たります。

もう1つは種子を風やケモノの体などを利用して、遠くまで運んで増えていく方法です。

タンポポ、センダングサやヌスビトハギなどがそれに当たります。

この方法は安全な生存な生存場所に行きつくかのリスクを負っています。

カタクリが群生しているもの、1株だけのものを見かけていて、前から不思議に思っていたのです。

カタクリは片栗粉を球根から採っていた歴史があり、ユリネ状のものから小さな球根を脇につけて増えていくに違いありません。

それと種を作って付近にばら撒いて生存場所を増やしていく戦略を採っているとすると、どちらも今までの生息場所から遠くにはなりません。

叢に1株だけあるのはどうしてだろうと疑問に思っていたのです。

日高敏隆「人間はどこまでが動物か」(新潮文庫)を読んでいたら、その疑問を解く鍵を見つけました。

「カタクリの種子には、種子本体にくっついた特殊な部分がある。この部分はある種の特別の脂肪酸を大量に含んでいて、『油小体』という意味でエライオゾームと呼ばれている。エライオゾームは種子本体の栄養になるわけでもないし、種子の発芽を助けるわけでもない。けれど、植物の種子を集めて巣に貯めこみ、食物にしているようなアリたちは、このエライオゾームが大好きだ。エライオゾームのついたカタクリの種子を見つけると、アリたちはさっそくそれをくわえて巣に持ち帰る。けれどもこのアリたちはエライオゾームを食べたいのであって、種子そのものに関心がない。カタクリの種子を持ち帰ったアリは、巣の入り口でエライオゾームを切り離し、種子本体は巣の近くに捨てて、エライオゾームだけを巣の中に運び込む。春の終わり、カタクリの種子の熟するころには、こうしてたくさんのアリたちがカタクリの種子を巣に運んで、巣のまわりに捨てていく。」と記されています。

こんなアリの行動でカタクリの種子が拡散する可能性があるらしいのです。

カタクリの種子を巣まで運ばないで、エライオゾームだけを取り出して運べば効率的だと思うのですが、そんな知恵はアリにはないのでしょうか。

それも疑問です。

カタクリが遠方に生存場所を拡大する方法の解決策の1つが垣間見えたので、なぜか知って嬉しくなりました。

(ユリ科 カタクリ科)

カモ撮りこうちゃん