チョウトンボを絶滅させた長良川浚渫(しゅんせつ)工事

長良川浚渫現場

人工湿地の上を飛ぶチョウトンボ

キイトトンボ

2年ほど前まで愛西市福原輪中の長良川土手下には人工湿地がありました。

湿地の多くは水面下に黒いビニールシートを敷いてあるところもあって、その湿地が人工的なものであることはすぐ分かりました。

そこには抽水植物などがたくさん生えていました。

その湿地を知るようになったのは3年ほど前からです。

福原輪中は木曽川と長良川に挟まれた60以上あった木曽三川の中の輪中の1つで、木曽川の西岸なのに愛知県愛西市に属している珍しい地区だったのです。

大きな川があれば行政区が異なるのが普通なのに、ここはそうではなかったのです。

最初知ったときにはとても驚きました。

私の推測ですが、木曽川や長良川の西側にも江戸時代には、高須藩など尾張藩の支藩があったことが関係していたのだろうと考えています。

その福原輪中には立田小学校の福原分校があって、勤めた教員たちの情報で輪中内には色々なトンボや鳥や動物が多数いると聞いていました。

そこで福原輪中に通うようになったのです。

輪中内でハラビロトンボ、チョウトンボ、ショウジョウトンボ、キイトトンボを見かけました。

チョウトンボとキイトトンボは珍しくなってしまったトンボです。

キイトトンボは数回見ただけでその後は見かけていません。

チョウトンボは人工湿地周辺に100匹以上いました。

湿地の水面を飛んだり産卵していました。

たくさんいたのでチョウトンボの習性も観察できました。

ところが翌年の夏に、湿地の水をポンプで抜き始まました。

それから長良川で浚渫した土砂で埋め立てたのです。

これまでいたチョウトンボはいなくなってしまいました。

インターネットで調べたら2億円強の国の予算での浚渫工事でした。

その湿地の一部でも残してくれたら、チョウトンボなど希少なトンボも生息できたのにと思い、工事関係者に話しかけましたが、意に介してはくれませんでした。

今年になってまた長良川の浚渫工事が始まりました。

昨年埋め立てた人工湿地の上に重ねて積み上げています。

また2億円規模の工事だと思われます。

たしかに歴史的に長良川など木曽三川は、洪水に見舞われてきた場所です。

明治になって西洋の土木技術を使って、やっと別流させられたと言われています。

人間の存在を確実にするために、同じように生息している動植物を絶滅させることは正義なのかどうか理解に苦しみます。

人間間の平等や公平さを主張する人が多い割りには、他の動植物へのそれを主張する話はあまり聞きません。

人間を越えた「平等概念」の学習を学校教育でもする必要があると思うのですが、皆さんはどう考えるでしょうか。

(チョウトンボ トンボ科 チョウトンボ属)(キイトトンボ イトトンボ科 キイトトンボ属)

カモ撮りこうちゃん