ゼンマイの綿毛は布に使われていた
山菜採りを始めたのは20代後半でした。
最初はゼンマイに注意が向いていました。
シダの仲間だと知っていたものの、ワラビとゼンマイの区別さえついていませんでした。
知り合いに月山にイワナ釣りに行かないかと誘われ、当時月山新道を建設していた西松建設の飯場に泊めさせてもらって、翌日に釣りに行きました。
数日前雨が降って水量が多くイワナを釣るような状況でなく全く釣れませんでした。
帰る途中でバスの時刻まで時間があったので、近くの神社の森でゼンマイだと思ってシダをたくさんリュック詰めて帰ってきました。
仙台に帰ってゼンマイに詳しい人に見せると、ゼンマイでないと言われました。
今ならゼンマイは陽当たりの良い場所に生えると分かっていますが、当時は全く知らなかったのです。
ゼンマイは田んぼの畦や荒れ野の湿地帯に近いところに生えています。
株になっていて何本かの茎が出て先端部が薄緑や茶色で丸まっており、時には茶色のワタで被われています。
そんなゼンマイを見ると、美しいので写真を撮りたくなります。
ところがワラビに比べてゼンマイの処理が難しいのです。
ワラビは採って重曹(じゅうそう)で灰汁(あく)抜きすれば食べられますが、ゼンマイは灰汁が強く簡単には食べられません。
ゼンマイを手で揉んでから筵(むしろ)で干して、また揉むのだそうです。
乾燥して保存食として使用するのが一般的です。
乾燥させるとウマノアシガタ(キンポウゲ)でも述べたように、灰汁の部分が少なくなるのだと思われます。
確かに煮しめや和え物に出てくるゼンマイは採ったばかりのものは使われておらず、干したものを水で戻したものが殆どです。
そのゼンマイの舌触りはやはり美味しいなと感じさせます。
ゼンマイの先端部を被うワタを何かに利用できるのではないかと思いました。
綿(木綿)と同じ繊維なのだから、量は少ないが織物などに使えないのかと思ったのです。
調べてみたら、東北ではゼンマイのワタを使って織物にしている場所がありました。
ゼンマイのワタの部分だけを取り出しごみを除いて天日干しにします。
他の繊維と組み合わせて織物にします。
縦糸には綿かキヌを、横糸にはゼンマイのワタ糸を使って布を織るのだそうです。
由利本荘市の天鷺(あまさぎ)村の「天鷺ゼンマイ織り」は、ゼンマイのワタゲと白鳥の羽毛を絹糸や綿糸に織り込むそうです。
ゼンマイの防虫効果、防カビ効果、白鳥の羽毛の撥水効果で良い織物ができると書いてありました。
ゼンマイのワタだけで織物にすることは難しそうです。
綿や絹糸に色合いをつける役割だけのようで、繊維としての強靭さはないように思われます。
でも私が感じたように、織物にする試みが昔からあったことに感銘を受けました。
(ゼンマイ目 ゼンマイ科 ゼンマイ属)
カモ撮りこうちゃん