ヒメギフチョウの食草 ウスバサイシン

東北に住んで良かったと思ったのは自然が豊かだということです。

自然が豊かなので野生の動植物を普通に見かけることができました。

4月の末から5月の連休にかけて、東根市の白水川ダム周辺の山に入って、ヒメギフチョウを見かけた時は興奮したものです。

誰もいない山沿いのカタクリが群生する叢で、飛翔したり吸蜜したりしているヒメギフチョウを見たとき、その光景を独り占めしている至福感を味わいました。

蟹江に帰ってからは、野生のギフチョウを探しに行きましたが、今のところその場面に出会っていません。

いつかそんな場面に出会えることを待ち望んでいます。

春の女神と呼ばれるギフチョウとヒメギフチョウの生息域は基本的に分かれています。

その境界線をルードルフィアライン(ギフチョウ線)と呼んでいます。

山形県はその線上なので、ギフチョウとヒメギフチョウが混在している可能性があります。

このギフチョウとヒメギフチョウの生息域を分けているものは何か、それは幼虫が食べる食草にあります。

ギフチョウはカンアオイ、ヒメギフチョウはウスバサイシンです。

どちらもウマノスズクサ科カンアオイ属に属しています。

そんな食べ物になる食草の分布域に規定されてこの両者のチョウ生息域が異なっているのです。

山形県の境界線上では、ギフチョウの幼虫がウスバサイシンの葉を食べていた報告を見たことがあります。

好きでなくても生きるために食べているのかも知れませんね。

気をつけるようになったら、葉がアオイの形をしたウスバサイシンをよく見かけます。

崖の北側斜面とか薄暗い雑木林の下などで見かけます。

花の時期になると、地面から茶色の目立たない花が咲きます。

よく見ないと気がつかないのですが、その花にはアリが出入りしていました。

ウスバサイシンとその花の印象がなぜか心に残っています。

話は変わりますが、徳川家の「三つ葉葵の紋」はずーっと庭先に咲いているゼニアオイの葉から創作されたと考えていました。

ところがゼニアオイは江戸時代に入ってきたのです。

葵紋は徳川家特有のものでなく、上賀茂神社、下鴨神社も葵紋で、神社の紋として昔からあったものです。

その紋の由来植物はカンアオイやウスバサイシンと同じ仲間のフタバアオイから造られたものです。

徳川の三つ葉葵は、フタバアオイの葉を三枚組み合わせて作り上げた創作だったのです。

そんなことを知ると、なぜかウスバサイシンにも親しさを感じるから不思議なものですね。

(ウマノスズクサ科 カンアオイ属)

カモ撮りこうちゃん