故郷に帰れなくなったミコアイサ

愛西市の大井川近くの善太川には、冬になるとカモたちがやってきます。

その中に中小型のミコアイサも含まれています。

数は多くなく、最近は数羽だけしか見かけていません。

近くの蟹江のウォーターパークの沼に移動したと思われます。

その沼では群れになっているミコアイサを見かけるからです。

ミコアイサはユーラシア大陸やカムチャッカ半島から何千キロも飛んでやってきます。

この辺りでは12月下旬にきて2月末には帰ります。

その善太川で5月に1羽のミコアイサを見かけました。

オスではまだ白い生殖羽のままでした。

私が土手を歩いて行くと羽ばたいて逃げようとするものの、空中に飛び上がれません。

水面を必死で羽ばたいて移動して行くだけです。

羽を傷つけたか骨折しているようです。

羽を傷つけると彼らの人生(鳥生?)は変わってしまいます。

故郷に帰れず、越冬場所で生きていかなければなりません。

肝心の子孫を繋ぐ生殖にも携われなくなります。

12月にそのオスのところに、越冬しに来たミコアイサの数羽のメスが善太川に降り立ちました。

魅力的なオスなのか、メス2羽がそのオスと一緒に行動していました。

危険を感じるとメスたちは飛び立ちますが、オスは飛び立てません。

その後メスたちはそこから離れていってしまいました。

翌年の5月には、今度は2羽のミコアイサを見かけました。

1羽はオスで白い生殖羽でしたが、もう1羽はメスのようでした。

オスの1羽を見かけて、土手を歩いて行くとすぐに潜りました。

潜った周辺をじっと見つめていましたが、いつまで経っても浮き上がる気配がありません。

遠くまで潜って移動していったのだと思います。

2年経った今年の5月に善太川を歩いてみましたが、ミコアイサを見かけていません。

この時期まだ白い羽が目立つに違いありません。

猛禽類のタカに狙われたのではないかと思われます。

冬にいたカルガモも産卵や育雛のため田んぼや沼に移動してしまい、善太川に残ったミコアイサのオスは目立つからです。

福島県浜通りの楢葉近くの沼にハクチョウを見に行った時、監視員が「ハクチョウは家族愛が強く、晩秋に渡ってくると、家族のハクチョウが取り残されたハクチョウのところにすぐやって来るんだ。」と話していました。

同じことがミコアイサでも起こっていたのでしょうか。

長い旅をするミコアイサにとって、羽を傷つけて飛べなくなれば、生きている甲斐がなくなることを意味しているんだなあと考えてしまいました。

(カモ目 カモ科 アイサ属)

カモ撮りこうちゃん