真っ赤なのにアカトンボではないショウジョウトンボ

トンボ少年だった私にとって、赤いトンボはみんなアカトンボでした。

黄色いウスバキトンボや真っ赤なショウジョウトンボ、秋に里に下りてくるアキアカネやナツアカネも、みんなアカトンボだと思っていました。

童謡の「赤とんぼ」で歌われるアカトンボはアキアカネではないかと思われます。

でもショウジョウトンボはアカトンボの仲間ではないようなのです。

ショウジョウトンボはトンボ科 ショウジョウトンボ属 タイリクショウジョウトンボなのに、アキアカネはトンボ科 アカネ属 アキアカネで別の分類に入ります。

アカネ属に入るトンボをアカトンボと呼んでいます。

形態的な違いは4枚ある翅のうち、前翅のつけ根から出る翅の前脈が、ショウジョウトンボとウスバキトンボは10本以上、アキアカネは9本未満と異なり、9本未満がアカネ属(アカトンボ)で、ナツアカネもそれに属します。

それ以外はアカトンボに入りません。

赤くないアカネ属の仲間もいるようです。

私たちと専門家のアカトンボの分類に違いがあるのですね。

ショウジョウトンボは捕るのが難しいトンボでした。

沼や田んぼの縁の水辺にいるからです。

オスの体色は深紅で、空想上の猩々(ショウジョウ)の尻の色に由来すると言われています。

縄張りを作って、他のオスが来ると排除し、メスが来るのを待っています。

この習性は多くのトンボに見られますが、いつ来るか分からないメスを待ち続ける労力は大変なものです。

メスは黄色っぽい体色でウスバキトンボと似た色合いです。

尾の部分ががっちりしていて、翅の根本が薄い黄色なので区別できます。

今年になって木曽川と長良川に挟まれた福原輪中で、人工の湿地帯を見つけました。

ショウジョウトンボとチョウトンボがたくさん生息していました。

そこでショウジョウトンボの交尾態と産卵の様子を数枚撮りました。

交尾時間はとても短く長くて10秒程度でした。

そのことにとても驚きました。

シオカラトンボでは数10分の時もあるのにです。

8月になって人工の湿地帯が長良川の浚渫(しゅんせつ)した砂泥で埋められてしまいました。

工事関係者に「貴重なトンボが生息しているのですが、全て埋め立てるのですか。」と尋ねると、「そうです。」と応えました。

9月半ばに湿地帯は消滅しました。

愛知県ではチョウトンボの数少ない生息場所と思われましたが、跡かたなくなくなってしまいました。

応対した人との会話を通して、人と野生動物の共生をどう図るかを真剣に考えなけらばならないと思いました。

一度絶滅すれば永久にいなくなるのです。

地球は人間だけのものではないという思想をどこで教育すれば良いのでしょう。

みんなに考えて貰いたいものです。

(トンボ科 ショウジョウトンボ属 タイリクショウジョウトンボ)

参考文献 トンボの不思議 新井裕 どうぶつ社

カモ撮りこうちゃん