研磨剤として使われているトクサ

山形の知人が植物の写真を送ってきました。

その写真はトクサでした。

日本庭園や料亭の入り口の盆栽の鉢などで、昔から見かけていたものの、名前は知りませんでした。

仙台に住む同級生から、トクサで戦艦大和の砲身を磨いていたという話を聞きました。

吉田満の「戦艦大和の最後」(講談社文芸文庫)の中に記されていたようです。

植物が研磨剤として使われるなんて、信じられない感じでした。

調べてみると、トクサの表皮には無水ケイ酸が蓄積していて、砥石のように研磨できるらしいのです。

無水ケイ酸は歯磨き粉にも入っていて、歯を白くするのにも使われています。

昔からトクサの茎を煮だして、それを紙に塗りつけて紙やすりにして使っていました。

柘植櫛(つげぐし)の歯や木工加工に研磨剤として使われ、仕上がりが柔らかで滑らかになるようにしていました。

砥石(といし)と同じ成分か調べると、砥石は堆積岩や凝灰岩の小さい粒で違っていました。

砥石の材質として石英質骨格の放散虫の死骸の堆積岩は特に良質だということです。

確かに硬そうでよく磨けそうですね。

時代劇で、侍が部屋で刀身をワタ玉(打ち粉)でポンポンと叩いている場面を見かけます。

あの打ち粉はトクサの粉ではないかと思ったのです。

調べてみたら、残念ながら打ち粉は砥石の細かい粒子が入っていて、刀剣の古い油を吸い取らせるのと磨くためのものでした。

予想が外れて残念な気持ちになりました。

トクサは木工用製品の研磨に使われているようです。

戦艦大和の砲身を磨いていた話が本当だとすると、古い油を取り除くことが主要な目的だったのかも知れません。

研磨の効果はどうだったのか知りたいところです。

トクサは地下茎で根を張って茎を直立させますが、直立させる役割を果たすのが硬いケイ酸なのです。

トクサはスギナ(ツクシ)と同じトクサ科です。

茎の先端の帽子(胞子葉)が、胞子を飛ばす部分だと思われます。

トクサとツクシの胞子をばら撒く場所は同じ構造になっています。

昔の人はトクサのこんな特長をよく知り尽くしていたんだなあと感心してしまいました。

(トクサ科 トクサ属)

カモ撮りこうちゃん