竹久夢二の「ヨイマチグサ(宵待草)」の花ってどれなの?

マツヨイグサ

コマツヨイグサ

夏から秋にかけてマツヨイグサの仲間が土手や叢で咲いてます。

夕方に咲き出して朝方には萎んでしまうので、その儚さが人の心に何かを訴えてくるようです。

童謡の「宵待草」(作詞・竹久夢二 作曲・多忠亮)は「待てど暮らせど来ぬ人を 宵待草のやるせなさ 今宵も月も出ぬそうな 暮れて河原に星1つ 宵待草の花が散る 更けては風も泣くそうな」となっています。

この歌詞にあるヨイマチグサは実際にどんな花なのか知りたいところです。

また夢二はこの花を「マツヨイグサ」ではなく「ヨイマチグサ」と呼んでいます。

その方が風情がぐっと強まるように感じますね。

先日知人の女性と話をしていて面白い話を聞きました。

夢二は滞在していた銚子でこの詩を書いたといわれており、そのヨイマチグサを銚子に探しに行くテレビ番組がありました。

浜辺近くを探索したり、その辺りの住民に話を聞いたりしたところ、ヨイマチグサは「コマツヨイグサ」ではないかということになりました。

「コマツヨイグサ」は背が高くならずに横に広がって咲く花です。

「日本の野草」(林弥栄編 山と渓谷社)には「北アメリカ原産の2年草。明治後期に渡来したといわれるが、急激に広がったのは昭和に入ってからで、関東地方以西の海岸や河原などに多く見られる。

茎は地面にはうか斜めに立ち、高さ20~60㌢となる。」と記されています。

またそれに似た「マツヨイグサ」は「南アメリカ原産の2年草。幕末のころ渡来して観賞用に栽培されていた。その後野生化し、昭和のはじめごろには関東地方以西の海岸や河原などに広く見られたが、以後急激に減った。」と記されています。

知人はそのテレビ番組の放映を見て、フェイスブックの「山野草、雑木、雑談を楽しむコミ」に撮った「コマツヨイグサ」を竹久夢二の謳った詩と共に載せたところ、すぐに「マツヨイグサ」ではないのかというコメントがあったそうです。

そこで知人はテレビ放映では「コマツヨイグサ」をヨイマチグサと言っていたこと、知人も今まで「マツヨイグサ」だと思っていたことを返信したと話していました。

夢二は明治後期から昭和初めに活躍した画家兼詩人で、「宵待草」の詩は大正6年(1917)に作られたようです。

「コマツヨイグサ」も「マツヨイグサ」も海岸沿いに広がり始めた時期に相当します。

夢二にとって目新しく可憐な花に見えたのではないでしょうか。

歌詞の雰囲気からはやはり「マツヨイグサ」の方が優勢でしょうが、「コマツヨイグサ」の花を見るととても可憐で可愛い花で、詩にぴったりです

私たちは具体物をじっくり見ないで、名前という観念的なものに惹かれて、想像を働かせ思い込んでしまっているのではないかと考えてしまいました。

(アカバナ科 マツヨイグサ属)

カモ撮りこうちゃん