ベニイトトンボの連結産卵での疑問
ベニイトトンボはキイトトンボ属で準絶滅種に入っているイトトンボです。
アジアイトトンボやクロイトトンボに比べてやや大きいイトトンボです。
ベニイトトンボが住宅に挟まれた団地の狭い庭で5年ほど続けて羽化しています。
庭の水槽(プランターなどを転用)は水を足すだけで放置しています。
庭の雑草もそのままなので、ビオトープさながらの荒れ野状態になっています。
6月中旬には羽化し始めます。
昨年は30匹以上羽化し、連結態の何組ものペアが水槽で埋め込み産卵をしていました。
ある場所で産卵すると次に移動して産卵を繰り返します。
ある場所で産卵し終わると次の場所に移動するとき、先頭のオスはそれをどうして分かるのか不思議に思っていました。
観察していると、メスが尻尾をまげて産卵し終わると、尻尾をまっすぐ伸ばすのです。
するとオスは飛び立ちます。
メスが場所を移動せよというサインを出しているようです。
ところが降りて産卵行動に入るかと思うと、そうでないときもあります。
そのままメスは尻尾を伸ばしたままにしています。
どんな時かというと、埋め込み産卵ができない水草のときのようです。
水槽にはアオミドロが繁茂して水面を被っているものもあります。
アオミドロは繊維が細くて産卵できないようなのです。
そんな場所に降りるとメスは尻尾をまっすぐに伸ばしたままでいます。
するとオスは飛び立ちます。
行動系列としては、オスが連結してメスを産卵場所に導き⇒メスは埋め込み産卵する⇒産卵し終わるとメスは尻尾を伸ばす⇒オスは移動サインと知覚して移動する という行動系列になっている訳です。でもメスが尻尾を伸ばすかどうかは、外的刺激の産卵しやすいアナカリス(オオカナダモ)か、し難いアオミドロかによっても決まります。
一連の行動系列が進む時に、外的刺激の存在の有無も作用していることが分かります。
行動系列は一度始まると最後まで進んでいく単純な機械的なルーチンではなさそうです。
もう一つの疑問は連結産卵するときオスが連結したまま立ち上がることです。
一番初めにそれを見たのは、天童市原崎沼の「網張の里」の小さい池でした。
その立ち上がった様子が面白くとても印象に残っています。
この行動は、ベニイトトンボでもクロイトトンボでもセスジイトトンボでも見られます。
立ち上がったとき、オスは翅を羽ばたかせていることが多いようです。
喜んで立ち上がっているようには見えません。
それが何かとても不思議でした。
立ち上がっているときはメスが深く屈んで埋め込み産卵している時なのです。
一つの考えはオスがメスを掴んでいる場所を支点にして、てこの原理でメスが尻尾をまげて埋め込み産卵するために下向きに力を込めるとき、反対側のオスは作用点として立ち上がるのではないかということです。
オスは喜んで立ち上がっているのではないような感じがしてなりません。
本当かなー。
(イトトンボ科 キイトトンボ属)
カモ撮りこうちゃん