ツマグロヒョウモンのオスはなぜメスと交尾できないの?

ツマグロヒョウモンの交尾態を見かけたことは数回ありますが、どのチョウもオスとメスが出会えば、すぐ交尾態になれると思い込んでいました。

モンシロチョウやキタキチョウの交尾態をよく見かけていたからです。

ところがツマグロヒョウモンを見ていると、オスがメスに一生懸命に交尾しようと迫っても上手くいかずに、そのうちあきらめて飛び去っていく場面を度々見かけるようになりました。

交尾できる確率は思っている以上に多くない感じです。

先日も海津市のハリヨ公園で、叢の端でツマグロヒョウモンのオスがメスの上を飛び回っていて、その後降り立ってメスの脇に並んで交尾しようとしていました。

ところがメスは全く動かずにじっとしています。

オスは尻尾を動かして何とか連結しようとしますが上手くいきません。

そんな時間が続いた後にオスは飛び去ってしまいました。

ツマグロヒョウモンのオスとメスが交尾するにも、一連の行動系列があるようです。

オスの行動が刺激となってメスの反応を誘発し、それが刺激となってオスの反応を引き起こし交尾までにいたるのです。

その行動系列は種によって決まっているようですが、それが中断されると最後の交尾までに至らないことになります。

モンシロチョウのメスはオスと一度交尾すると、その後は交尾を拒否する体勢を取るようになります。

オスが迫ってくると尻尾を高く持ち上げて交尾できないようにします。

土手や叢でこうした場面を見かけています。

ツマキチョウではトンボの仲間のように交尾するとすぐ産卵を始めるのではなく、ツマキチョウはかなりの時間を経過してからアブラナ科の植物に産卵するようです。

このモンシロチョウとツマキチョウの例から類推すると、ツマグロヒョウモンのメスが交尾態にならないのは、既に他のオスと交尾していて、地面で拒否体勢(尻尾を下げるか上げるか)をとっていた可能性があります。

ツマグロヒョウモンのオスはあきらめざるを得ないということになります。

交尾に至る行動系列が成立しないのですね。

既に交尾しているメスかどうかはオスが迫って拒否されるかどうかで確認しているようです。

オスがメスに一生懸命迫る努力を前提にして、ツマグロヒョウモンの子孫へ繋ぐ戦略ができているようです。

動物の世界ではメスが交尾の主導権を持っているというのは、ここでも当てはまるように思ってしまいました。

(タテハチョウ科 ツマグロヒョウモン属)

カモ撮りこうちゃん