思い出深いトゲウオの仲間イトヨ
イトヨ(いわきアクアマリンで)ボケていますが悪しからず
イトヨは動物行動学のニコ・ティンバーゲンの実験で使われ、繁殖期のイトヨのオスが、縄張りに入ってくる他のオスを追い払う行動の仕組みを実験的に確かめたのです。
彼は1973年にノーベル生理学賞を受けています。
その実験はオスの縄張りに侵入する他のオスの形か、婚姻色の赤色かを確かめる実験でした。
その結果赤色に反応することが確かめられました。
一方オスの婚姻色はメスにとっては誘因刺激になっているはずです。
オスが赤い腹を見せると引き寄せられてメスが近づいてきます。
メスの腹は膨らんでいてオスの行動を引き起こす誘因となってジグザグダンスのように行動系列が続いていきます。
今では各県の天然記念物になっているイトヨが、昔4月に仙台のペットショップで売られていました。
そのイトヨを何匹か購入し、自宅の大型水槽に砂を入れ藻や水草を入れて、水の循環装置をつけて飼育しました。
餌は糸ミミズを買ってきて毎日何時間も観察したものです。
オスは既に婚姻色でメスの腹も大きくなっていました。
藻を入れてやると尻から粘液を出して擦りつけて巣を作り始めました。
幅も長さも大きな巣ではありません。
水面近くでは腹が大きくなったメスが待機していました。
巣造り中オスはメスを追っ払ってジグザクダンスで誘うことをしませんでした。
オスメス共に相性があるのではという印象を受けました。
オスがメスを誘うとばかり思っていましたが、メスがオスを誘う場合もあるように思いました。
オスがメスを巣に誘うことに成功したものの、メスが気に入らずに出ていってしまいました。
オスは何度も修復するように巣造りを繰り返しました。
今度はメスを誘うとメスは巣の中に入り、顔を巣の端から出したまま動きません。
オスはその巣の中に入りメスと並んだ状態になりました。
するとメスが動き出して巣から出た時にはメスの腹は萎んでいました。
並んだ時にオスの放精があったとも思われます。
それからのオスは巣から離れませんでした。
別のメスがくると誘って巣に入り同様の行動をしました。
その後オスは巣の前で胸ビレを動かし水流を送っていましたが7~10日ほど経つと稚魚が誕生しました。
その稚魚が大きくなる過程で、5月末頃から水槽の水温が上がって稚魚の様子が変わってきました。
稚魚の皮膚に白い斑点がつき出したのです。
カビではないかと思い冷蔵庫から氷を取り出して水槽の中に入れて水温を下げようとしたものの、稚魚は体中にカビが生えて死んでしまいました。
トゲウオの仲間は氷河期の生き残りで湧き水のあるところで見られます。
冷水を保つなど飼育の難しさを学びました。
今となってはイトヨに感謝しています。
(トゲウオ科 イトヨ属)
カモ撮りこうちゃん