なにか近寄りがたいキツネノカミソリ

東北の夏に奥羽山脈や阿武隈山地を横断すると、山を下りだした山道脇の薄暗い感じの土手の叢(くさむら)にキツネノカミソリの花が何株かずつ生えているのを見かけます。

この植物はヒガンバナほど華やかではありませんが、花が咲くときは花だけなのでヒガンバナの仲間だろうなと昔から感じていました。

調べてみると、やはりヒガンバナと同じヒガンバナ科ヒガンバナ属に属していて、親戚のような関係です。

生態も似ていて冬から春までに球根から葉を出して、栄養を蓄えて夏季休眠するところもヒガンバナと同じです。

夏のお盆頃になると花芽を出して花を咲かせます。

私の印象ではヒガンバナは9月半ば頃に咲き始めるのにキツネノカミソリは8月頃で、咲き出す時期が1か月ほど早いようです。

キツネノカミソリは花びらが細く橙色で、ヒガンバナ程華やかではなく、ユリのような感じの花が咲きます。

好感が持てるかというとその逆で、私にとっては存在は気になるものの、近づきがたい恐れを感じさせる存在です。

家に帰って花瓶に活ける感じにはなりません。

ですが、その存在が心に入り込んでくる花であることは確かです。

キツネノカミソリの名前の由来は、葉がカミソリに似ていることと、花がキツネの色と似ているからだという説があるようですが、本当のところは分かりません。

でもヒガンバナの葉ととても似ているので、葉が細くカミソリに似ているからキツネノカミソリという名前がついたというのは、私には信じがたい感じがします。

キツネノカミソリは、ヒガンバナと同じリコリンというアルカロイドが含まれていて有毒です。

それでもヒガンバナは色々な工夫をして無毒化して、飢饉のときに救荒植物として利用されてきました。

無毒化するのに失敗して死んだ人もいると聞いたことがあります。

キツネノカミソリもヒガンバナ同様に利用されていたのではないかと思われますが、何せその数は多くないと思われるので、実際のところはどうだったのでしょう。

全国的に分布しているはずですが、蟹江周辺では今のところキツネノカミソリを見ていません。

東北の夏にキツネノカミソリに出会ったことを、今懐かしく感じているところです。

(ヒガンバナ科 ヒガンバナ属)

カモ撮りこうちゃん