センダンの「双葉より芳し」は違っていた

蟹江近辺を歩き回っていると、川べりでセンダンの木を頻繁に見かけます。

その木は2~3段階の羽状複葉なので葉が込み入った感じです。

薄紫の花がたくさん咲き、実そのものはギンナンを少し小さくした雰囲気です。

初めはセンダンだと分からずに、近くの龍照院で写真を撮りながら、近くの人に「これは何という木ですか」と尋ねました。

すると「センダンです」と応えたので、「センダンは双葉より芳しのセンダンですね。」と返すと、「それとは違います」と言われました。

該当する木は百檀(びゃくたん)というインドから持ち込まれた香木のことで、このセンダンとは違うというのです。

「日露戦争の時に、センダンを虫下しとして使った。」ということでした。

日露戦争なら正露丸の成分に入っているに違いないと思って調べてみましたが、主成分はクレオソートで、センダンは入っていませんでした。

それより前から漢方薬として樹皮が虫下しとして利用されていたようです。

夏の終わりから秋にかけて、枝の同じ位置から分かれた長い柄にぶら下がったセンダンの実がたくさんなります。

ギンナンのような形で、鳥の餌として最適だから、川べりにたくさんあるのだろうと考えていました。

秋になると鳥たちは木の実を食べ始めます。

どの鳥も一番の好物はカキの実です。

10月半ばを過ぎると、スズメ、ヒヨドリ、ムクドリ、ツグミなどが食べに来ます。

鳥たちは加減して食べることはなく、その場所の実を食べ尽くすと次の木の実に移動していきます。

ウオーターパークにあるセンダンの実は12月になると、ヒヨドリやムクドリが来て食べ始めます。

センダンの実はカキよりは美味しくないようです。

サンザシ(ピラカンサ)の橙色の実もなっていますが、食べている気配はありません。

秋から春にかけて、鳥たちの食べる木の実が変化していきますが、それぞれの鳥たちに好き嫌いがあるようです。

ある鳥が食べるものでも、他の鳥は食べないというように、鳥の種の違いによって苦みや酸味の感受性が違っているからかもしれません。

12~1月になると、それでもセンダンの実はなくなっていきます。

結局は実が食べられて方々にばら撒かれ、子孫が増えることにつながっていくことになります。

自然は、鳥たちのそうした好き嫌いなどの行動の幅を認めながらも、種をばら撒く目的を最後は完遂させてしまいます。

自然ってすごいとしか思えませんね。

(センダン科 センダン属)

参考文献 野鳥と木の実ハンドブック 叶内拓哉 文一総合出版

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