せっかくヘクソカズラの変種をみつけたのに
植物の中には、名前が良いとはいえないものがあります。
例えば、オオイヌノフグリ、ハキダメギグ、クサレダマなどです。
ヘクソカズラもそうした仲間に入るでしょう。
ヘクソカズラは、全体に悪臭があり、そこから屁くそ葛といわれるようになったと言われています。
その成分はメルカブタンという揮発性の物質ということです。
天童に住んでいた頃、アパートの西側に畑があり、何人かがその一角を借りて菜園をやっていました。
その畑の脇は草叢になっていましたが、そこにヘクソカズラが生えていたのです。
夏になって、そのヘクソカズラは花全体が赤いヘクソカズラを咲かせました。
普通のヘクソカズラは花の真中だけが赤く、周りは白いのです。
植物で白が出てくるのはよくあるのですが、赤い花は変種といって良いと思います。
私はその時に、身近にこうした変種を見つけて感動していたのです。
ところが数日後、その草叢は綺麗に刈られて、ヘクソカズラの変種は跡形もなく、消えていました。
その翌年、咲いていないか見てみましたが、見かけませでした。
私たちの多くは、園芸植物や野菜など意外は、「雑草」と名付けて刈り取ってしまうのですね。
昔、昭和天皇が皇居の庭の植物を刈っている職員に、「何を刈っているのか。」と尋ねると、「雑草を刈っているのです。」と応えたら、「雑草というものはない。それぞれ名前があり、それぞれの生き方をしている。」と話されたというエピソードがあります。
植物に対しても、人間本位の考え方を再考する必要があるように思えてなりません。
(アカネ科ヘクソカズラ属)
参考文献 日本の野草 山と渓谷社 林弥栄 編
野草・雑草の事典530 西東社 金田初代 金田洋一郎
カモ撮りこうちゃん