縁起が良くないと言われるタニウツギ
6~7月頃に東北の山沿いを走ると、ピンクのロウト状の花をたくさんつけた植物を見かけます。
アジサイのように細い木が地面からたくさん出ている落葉低木です。
「日本の樹木」(山と渓谷社 林弥栄 解説)を見ると、タニウツギとなっていました。
分布は北日本、また日本海側に生えているようです。
私はタニウツギがウノハナと呼ばれる植物だと思い込んでいました。
唱歌「夏は来ぬ」の「ウノハナの匂う垣根に、ホトトギス早も来鳴きて~」と歌われる部分の花が、このタニウツギのことだと思ったのです。
車を停めて、その花の香りを嗅いでみましたが、歌詞のような香りはしませんでした。
不思議だなあと思っていたのです。
その後、色々な植物に出会ううちに、ウノハナと呼ばれるウツギは別にあることが分かりました。
全く勘違いしていました。(ウツギについても書く予定)
この花の雰囲気からすると、和室で花瓶に活けたら、さぞかし部屋が映えるだろうなと前々から思っていたのです。
職場で同僚の女性とタニウツギの話をしていた時、こんな話をしてくれました。
彼女が結婚して間もない頃、このタニウツギを花瓶に活けて部屋に飾ったところ、義母にかなり厳しく注意されたというのです。
というのは、タニウツギはその茎を箸代わりにして、亡くなった故人の骨を骨壺に収める時に使用する道具だと言われたというのです。
それで縁起が悪いタニウツギを花瓶に活けて飾っては駄目だと強く言われ、それからは一切活けていないということでした。
タニウツギがこのように葬儀で使われる文化は東北全体にあるのか調べましたが、地域によって行われているもので一般的ではないようです。
故人の骨を骨壺に収める時、日常使う箸や菜箸では失礼だろうし、葬儀そのものが急に起こるので、適当な材料として、家の周りにあるタニウツギの枝を使ったのではないかと思われます。
それがある地方の文化として定着していったと考えられます。
タニウツギには何の責任はありませんが、人があるものに意味や意義をつけることで価値づけする良い例だと思います。
日本人の好きな言霊信仰の一つかもしれませんね。
(スイカズラ科 タニウツギ属 落葉低木)
カモ撮りこうちゃん