昔は親しかったキリギリス
夏の終わる頃、土手を歩いていると叢から虫の声が聞こえるようになります。
その中にギーチョンと鳴く虫がいます。
それがキリギリスです。
その姿を見ることはほとんどできません。
聴覚(前足の脛節の鼓膜)が優れているのか、歩いて行くとかなり遠くでも鳴くのをやめてしまいます。
鳴いていた場所近くに行ってもほとんど見つけることができません。
小学生の頃、軒下にぶら下げた虫籠(かご)でキリギリスを飼ったことがあります。
縁日で手に入れた記憶はないので、叢を歩き回って捕まえたキリギリスだと思います。
餌としてキュウリやスイカの縁の部分を与えたことを覚えています。
日本大百科全書(ニッポニカ)の「キリギリス」には「本州から九州に普通に分布し、草原に多い。~中略~ オスは日中、草むらでチョンギース、チョンギース、とやや間隔を置いて発音する。成虫は夏季に出現し、多くは夏の終わりまでに交尾、産卵して一生を終わるが、秋まで成虫で見られることもある。卵越冬で、翌春5月頃孵化(ふか)する。肉食が強く、したがって飼育するときは、共食いを避けるために狭い籠(かご)の中では、1頭ずつ隔離して飼わなければならない。季節になると虫屋で売られ、家々の軒下につるされた虫籠からチョンギースと聞こえる風情は、夏の風物詩である。」と記されています。
肉食が強いと書かれているので、煮干しやソーセージなどを入れてみれば良かったと思ってしまいました。
スズムシも昔から共食いすると言われています。
体を作ったり産卵のためのタンパク質が必要なのでしょう。
ところでキリギリスといえば、「アリとキリギリス」のイソップ童話が有名です。
本来はアリとセミの童話らしいのが、セミがいない北欧まで童話が広がっていくうちに、「アリとキリギリス」になってしまったようです。
勤勉なアリと遊び呆けるキリギリスという童話ですが、その最後の顛末には色々あるようです。
日本の桃太郎やかぐや姫でもその物語の結末は地方ごとに違って伝えられているようです。
どれが正しいとか正しくないとか言うことではありません。
その時代や社会の背景によって、道徳的に利用され解釈されてきた経緯があることも本当でしょう。
読んだり聞かされた子どもたちが大人になってからどう思うかでないかと思います。
面白かったのは、ミツバチでもアリでもすべてが勤勉に働いているわけではなく、7割が働かないという社会がうまくいっているという「働かないアリに意義がある」(長谷川英祐 中経の文庫)という本があるそうです。
私の昔の職場でも似ていたなあと思ってしまいました。
(バッタ目 キリギリス属)
カモ撮りこうちゃん