歴史と生きるためのせめぎあいを学んだモツゴの話
蟹江周辺では7月を過ぎると大量にフナの稚魚が採れます。
最初はバケツに入れていますがいつも四手網に入るので、元の用水路に逃がしてやります。
そんな中に少し細長い魚が入ってきます。
割りと普通に見かける魚です。
小さい頃はその魚をモロコと呼んでいました。
腹には黒い側線があるのですが、小さい時にその確認をした記憶がありません。
東京の母の実家近くにある戸越公園の池に魚釣りに行ったとき、周りの子どもがその魚をクチボソと呼んでいました。
モロコなのにクチボソと呼ぶなんておかしいと思ったものでした。
小学6年生の時だったと思います。
その魚に親しんでいるうちに、正式名がモツゴだと分かりました。
口先が少し上に向いているので、東京ではクチボソと呼んでいたのでしょう。
方言名でこの辺りではイシモロコとかホソモロコと呼んでいるようです。
他にも似た魚がいることに気がついていますが、ホンモロコはコイ科の仲間で髭がありますが、髭がないのでモツゴの仲間かも知れません。
海津市の「お千代保稲荷」の参道には川魚の佃煮屋がありますが、モロコの佃煮を売っています。
それはホンモロコの佃煮なのか、モツゴのそれなのか疑問に思っています。
方言名から言えばモツゴもモロコなので、多分モツゴでないかと推測しています。
モツゴには3種類あるようです。
モツゴ、シナイモツゴ、ウシモツゴです。
モツゴは西日本や中国大陸に、シナイモツゴは東日本に、ウシモツゴは濃尾平野に分布しているようです。
私が見かけているモツゴは、西日本一帯に見られるモツゴだと思われます。
モツゴとシナイモツゴの分布の違いは、「シナイモツゴの生い立ち」(川瀬成吾)によると後から日本入ってきたモツゴが中央高地の隆起によって東日本に入り込めなくなったからだと考えられています。
その意味でシナイモツゴの方が古いモツゴのようです。
ウシモツゴは濃尾平野に生息しますが、ほとんど絶滅状態に近いようです。
犬山市のため池の調査研究(大仲知樹 犬山里山研究所)では、ウシモツゴの池にモツゴが侵入すると、交雑してF1では不稔になることと、シナイモツゴの例から、産卵期が短いウシモツゴが長く柔軟な繁殖特性を持つモツゴに置換されてしまう可能性などについて述べています。
こんな小さなモツゴの世界でも、長い歴史による分布の違いや、属内の生存をかけたせめぎ合いがあることにびっくりしてしまいました。
(コイ目 コイ科 モツゴ属)
カモ撮りこうちゃん