人生で1回しか出会っていないアケボノソウ

これまで野山を歩き回っていて出会った動植物のうち、もう二度と出会わないだろうと思うものがあります。

例えば動物ではヒクイナであり、植物ではキンランとアケボノソウです。

その生態や分布を知っている人にはありきたりの動植物だろうと思うのですが、色々なところを歩き回っているのになかなか見かけません。

植物の場合には、翌年の同時期に出かけてみますが、見つけられないことが普通です。

出会えたとき一期一会だと思って何枚も写真を撮ります。

でも撮影技術が未熟なためぼやけてしまい、悔しい想いだけが残る場合が多いのです。

アケボノソウは宮城県村田町の山中の谷川沿いに、9月中旬に咲いているのを偶然見かけました。

咲き出してから時間が経過していて、もう少しで枯れ出しそうな感じでした。

アケボノソウは新聞や雑誌で見ていて、見た瞬間アケボノソウだと分かりました。

花の様子が独特で、それが印象に残る植物だからです。

アケボノソウはリンドウ目、リンドウ科、センブリ属で、センブリと同じ属です。

センブリの葉が細く花も小さく可憐なチゴユリのようなのに比べると、個性的で同じセンブリ属とは思えません。

人を魅了する花だということに異を唱える人はいないでしょうね。

「Hiroken 花さんぽ」の著者は「センブリ属の花はどれも好きだが、この花の造形のすばらしさは群を抜いていると思う。和名は、わずかにクリーム色がかった白い花冠を夜明けの空に、暗紫色の細点や、やや緑かかった黄色の点を星々に見立てたと言われる。~中略~ 緑かかった黄色の点は蜜腺溝で、ここから蜜を分泌し昆虫の訪花を誘う。~中略~アケボノソウの蜜腺溝は花冠の長さ方向の半分より外側にあり、毛状の付属帯もないので良く目立つ。蜜腺溝から花冠の根元までは模様がなくとてもすっきりしていて、そのことが蜜腺溝や暗紫色の斑点をさらに浮き立たせる。」と記しています。

普通の植物は茎の断面が丸いことが多いのに、アケボノソウは4稜状で四角です。

シソ科の四角い茎とは雰囲気が違っているようです。

私が不思議に思うのは、山形県の奥羽山脈の裾野の丘陵地帯や宮城県の阿武隈山地の森でもほとんど見かけないアケボノソウが、インターネット、新聞や雑誌にたびたび掲載されていることです。

その花の姿のすばらしさから掲載しているのでしょうが、どこにそんなに写真が撮れるアケボノソウがあるのか不思議です。

野草を栽培し販売する業者によって、園芸植物として広がっているのではないかと思われます。

野草に興味を持ってもらう点では、それも良しとしなければならないでしょうね。

(リンドウ目 リンドウ科 センブリ属)

カモ撮りこうちゃん