宮沢賢治のメクラブドウはノブドウだった
東北の野山を歩いていると、夏から秋にかけて青色から赤紫の色彩のブドウを見かけます。
中には形がいびつになっているものもあります。
初めて見た時はヤマブドウではないかと思いました。
ヤマブドウの果汁は高価なのにそこら中で見かけ、しかもぶら下がっている様子もありません。
宮沢賢治の作品に「メクラブドウと虹」という話があります。
宮沢賢治は盛岡農林学校を出ていることもあって、植物への造詣が深く色々な植物を知っています。
メクラブドウはノブドウのことで、岩手県周辺ではそう呼ばれていたようです。
メクラブドウの謂(いわ)れは、その汁が目に入ると盲(めくら)になるという言い伝えからです。
蟹江周辺を歩くようになって、道端にこのノブドウを頻繁に見かけます。
木々の間から垂れ下がっているものや、コンクリートの道路にはみ出して這っているものもあります。
秋口になると色彩豊かな実をつけるようになります。
この色彩の美しさから写真に収めたり、描く対象に選んで絵画作品を創作している人たちを見かけますが、そんな気持ちも分かるような雰囲気をノブドウは持っています。
東北で見かけたノブドウは、形がいびつなものが多かったのですが、蟹江周辺ではそうしたものは余り見かけません。
その理由は何だろうかと不思議に思っていました。
果実の形がいびつになるのは、ブドウタマバエとかブドウトガリバチなどの幼虫が果実内に寄生した結果です。
ノブドウの色の多様さについては、果実の成熟に従って変化するのか、それとも幼虫が住みついた結果(虫えい)なのか、まだ決着がついていないようです。
(興味のある方は https://kinomemocho.com/sanpo_nobudo.html を参考にされたし)
蟹江周辺で見かけるノブドウの数はかなりに上ります。
その全てに幼虫が住みついて、しかも形がいびつでないというのは納得できかねるところがあります。
幼虫が住みつくから果実が多彩な色になるという仮説は、今後検証する必要があるでしょう。
もし幼虫が出す糞の成分とノブドウの成分が化学反応を起こしてある色彩を生み出すとすれば、寄生する幼虫の多様さとノブドウの色彩の範囲の関係も調べる必要があるかも知れません。
それはともかくとして、ノブドウの色彩の美しさに見とれてしまう感性の方が第一に必要ではないかと思ってしまいました。
(ブドウ科 ノブドウ属 つる性落葉低木)
カモ撮りこうちゃん