なぜアキアカネは刈り入れ後の田んぼの水溜まりで産卵するのか

昔から10月頃になると、アカトンボが刈り入れ後の田んぼの水溜まりで産卵しているのをよく見かけていました。

蟹江周辺ではアキアカネ、コノシメトンボ、ナツアカネが見られますが、圧倒的に多いのはアキアカネです。

産卵している水溜まりは少し経つと水がなくなり、地表の泥が乾いた状態になります。

産卵した卵も乾いて死滅するだろうと考えていました。

全くの無駄打ちだと思っていたのです。

シオカラトンボ、ギンヤンマは池や沼の水面で産卵します。

そこの水が涸れることはほとんどありません。

卵が水中で孵化しヤゴになって越冬し、翌年または翌々年に羽化すると思われます。

トンボの一生とはそんな生き様だと思っていたのです。

ところがアキアカネの無駄打ち(産卵)はどうしたものかと、ずーっと疑問に思っていました。

田んぼの水溜まりで産卵し死滅した以外のところで、ヤゴになり羽化したアキアカネが、子孫を増やしているに違いないと考えていたのです。

「トンボの不思議」(新井裕 どうぶつ社)にその疑問の解答が載っていました。

それによると

「田んぼに住む10種類のトンボに共通しているのは、卵から成虫になるまでの期間が1年以内のものである点である。 ~中略~ アキアカネのメスを捕まえて、しっぽの先を見ずに浸すと、すぐ産卵を始める。こうして得た卵を、採卵2時間後、3日後、23日後に水中から取り出してシャーレに入れ、日当たりのよい窓辺において乾燥させてみた。採卵後2時間後に取り出したものは3日目に、3日後に取り出したものは5日目に、全て干からびて死んでしまった。それに対して、採卵23日後に取り出したものは、干からびずに、水中に戻したところ孵化したものが多かった。孵化したものと孵化しなかった卵を比較したところ、ヤゴの目になるところが黒く色づく『眼点期』まで発生が進んだものは、孵化率が高いことが分かった。このことから産卵後すぐに干上がってしまう場所だと、卵も干からびてしまうが、産卵場所が湿っていて、眼点が形成されるまで発生が進んだ卵は、乾燥に耐性をもつようになると考えられる。」

と記されていました。

観察していると、アキアカネは水辺の泥の部分で産卵していることが多いのです。

泥は水分を含み乾燥しにくいはずですから、地表の水分がなくなっても、地中の泥で水分が保たれている可能性が高いと考えられます。

アキアカネの産卵行動は、子孫を残す合理的な方法だと思い知ったのです。

しかも稲作の循環と深い関わりをもって、一年サイクルで産卵、孵化、羽化を繰り返しています。

アキアカネは稲作と共に生きてきたアカトンボなんだとつくづく思ってしまいました。

(トンボ科 アカネ属)

参考文献 トンボの不思議 新井裕 どうぶつ社

カモ撮りこうちゃん