ツキノワグマの冬眠について
質 問 t・eさんより
ツキノワグマは、冬の間、何も食べないでも、どうして生存できるのでしょうか。
秋に、便秘するような木の実を食べて尻の穴を閉じて、春に、毒草のザゼンソウなどを食べて、いわば下痢をして、元の生活に戻ると聞いたことがあります。
これは本当でしょうか。
回 答
なかなか面白くて楽しい質問ありがとうございます。
良い質問だと思います。
「便秘するような木の実を食べて尻の穴を閉じて、春に毒草のザゼンソウなどを食べて、いわば下痢をして、元の生活に戻る」という話は初めて聞きました。
ツキノワグマは冬眠中何も食べないままですが、冬眠に入るまでに食べて腹に残っている木の実や山菜は冬眠当初に糞として排泄していると思われます。
木の実などの繊維質が腹の中に滞留していれば発酵しておならが出て苦しいはずです。
尻の穴を閉じてという部分は考えにくく、排泄していると考えた方が良いのではないかと思います。
冬眠している巣穴にはいくつかの便が残されているでしょう。
その後、排泄後は秋に蓄えた体の脂肪を使って体を維持していると考えられます。
食べないまま冬眠していて、体では多少でもエネルギー代謝が行われていて便らしいものは溜まってくるはずです。
出産した赤ん坊の胎便のような感じでしょうか。
質問者の「春になって体内に残っている便を出して冬眠を終える」というところは、この胎便と同じようなことで当たっているのではないかと思います。
因みにそれを「とめ糞」と呼んでいるようですよ。
冬眠中食べないで生存できるのは仮死状態のようになっているからです。
体温を4~5度程度下げ脈拍も遅くして、エネルギー代謝を少なくしているのです。
その間エネルギーのもとは脂肪なので、秋のうちに脂肪になる木の実や甘い柿など大量に摂取しなければ冬眠できません。
クマも必死なのです。
山にブナやドングリが少ないと里に下りてくるのは必然だとも言えましょう。
実際に冬眠中は、仮死状態というよりは、うつらうつら状態で寝ているようです。
そりゃそうでしょうね。
何か月も完全に仮死状態でいられるはずがありません。
メスは冬眠中にコグマを出産して授乳します。
飲まず食わずで授乳しているわけです。
メスは6月頃から何頭ものオスと交尾し、その受精卵が子宮の中で浮遊して、秋になって子宮に着床し冬眠中に出産します。
妊娠期間は210日ほどと言われています。
メスの子育てを考えると、巣穴の中で授乳して子育てしているので、寝ているとは思われません。
その活動全てが秋に蓄えた脂肪によるものと思われます。
生まれたコグマの父親は異なっているようです。
私はそれを知ってとても驚きました。
クマの冬眠は熱帯地方のマレーグマや北極のシロクマではしていないようです。
四季がある温帯地方のクマで見られるのではないかと思われます。
冬になって餌がとれないから、進化の過程で適応行動として冬眠するようになったのではないかと予想されます。
因みに北海道のヒグマも冬眠します。
ところでヤマネも冬眠しますが、同じ理由なのか、小さいために冬に体温維持できないからか、ツキノワグマと違う理由かもしれません。
いつか調べてみたいと思っています。
カモ撮りこうちゃんより