生まれつきの能力と言うけれど

トンボの仲間を見ていると、オスがメスの頭を尻尾の先で挟んで連結すると、すぐ丸くなる交尾態になって、メスはメスの尻尾をオスの腹の下にある副性器に当てて、精子を移精させます。

それがとても不思議なのです。

どうして間違えずに行えるのか。

親が産卵して羽化するまでに長くても1年程でしょう。

連結態から交尾態になり、産卵行動に至る一連の行動を学ぶ機会はないと思われるのに、羽化するとどのトンボもそれができるのです。

とても不思議ですね。

ある時、シオカラトンボのオスとメスが連結態になっているのを見かけました。

丸くなる交尾態になろうとしましたが、メスの尻尾がオスの副性器にうまく当てられず、交尾態になれませんでした。

いったんオスとメスは離れましたが、オスは再度メスと連結態になりました。

それでもうまく交尾態になれず、オスはメスを離していってしまいました。

こんなメスは初めてで、行動の連鎖が続かず産卵行動まで至りませんでした。

生まれつきの能力である刺激-反応ー刺激・・・と続く連鎖はかなり厳密に決められているようです。

また刺激として知覚するその幅(刺激汎化や反応汎化)の広さはどの位のものなのでしょう。

ギンヤンマのオスは通常、田んぼの稲が植わっていない水面、沼、池や川などの水面上を巡回飛行しています。

ある時、日照りで水がなくなって泥が現れてひび割れしている田んぼの上を巡回していました。

また、秋口になって、早生のコシヒカリが一面に稲穂を垂らしている田んぼの上を何度も巡回飛行していました。

水面上と、泥の上と、稲穂の上を巡回飛行するギンヤンマのオスは、同等の刺激として知覚している可能性があります。

私たちから見ると全く違った環境刺激なのに、なぜ同じように飛行するのでしょうか。

とても不思議です。

その日照りの年に、ひび割れしている地面の裂け目に潜り込んで産卵しているギンヤンマの連結態を見ました。

ひび割れの下の地中は水分がまだあるのです。

ギンヤンマは、その水分があるかどうかを知覚して行動していると思われます。

その環境への適応力に関心せざると得ませんでした。

その環境への適応力は本当に生まれつきだけなのか、それとも学習されているものも含まれるのか、とても不思議です。

カモ撮りこうちゃん